美容鍼は、ここ最近注目を集める美容法の1つです。
化粧品やエステとは異なり、鍼を使って肌だけでなく筋肉や神経などにアプローチすることで、自然な美しさを引き出します。
しかし、「なぜ鍼が美容にアプローチできると言われているのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
この記事では、美容鍼のメカニズムを科学的な視点から解説し、その秘密に迫ります。
美容鍼がもたらすメリットや仕組みを知れば、もっと自分らしい美しさを手に入れるヒントが見つかるかもしれません。
はりきゅう整体院すえの手の院長をしている私が解説します!
*体に鍼をする場合や鍼に電気を流す場合は、別途解説します。
本記事では、頭と顔のみに鍼する手法によって起こることを解説しています。
美容鍼:肌の調子を整える鍼灸の技術を応用した美容法
美容鍼とは、顔に細い鍼を刺すことで血液やリンパの流れを促進し、肌の調子を整える鍼灸の技術を応用した美容法です。
特に、顔の肌トラブルや老化による変化を改善するために利用されることが多く、自然治癒力を引き出して肌の健康をサポートします。
血行促進や筋肉の緊張緩和、ターンオーバーの促進、コラーゲンの生成促進など、さまざまなメリットが期待できます!
しかし、美容鍼は顔だけでなく身体全体の調子を整えるサポートにもつながります。
身体に期待される影響についても解説していきます。
実際に美容鍼を受けた方が感じた変化
先に、美容鍼を受けた方が実際に感じた変化のご紹介です。
美容鍼灸に対する一般女性の認識と課題に関する調査研究という調査では、美容目的の鍼灸を実際に受けたことがある方が感じた変化として、以下のようになっています。
- リフトアップ:62.5%
- たるみ:54.2%
- むくみ:54.2%
- 小じわ(笑いシワなど):41.7%
- 深いシワ(ほうれい線など):25%
- クマ:25%
- 小顔:25%
- リラクゼーション:25%
- 肌質:16.7%
- 即効性:16.7%
対象者が24人と少ないですが、1つの参考になると思います。
美容鍼が顔に与える3つの反応
美容鍼では、以下の3つの反応が美容に良い影響を与えます。
根拠となる研究論文もあわせてご紹介します。
局所の血行促進
鍼を刺した部分には、「軸索反射」という反応が起こります。
軸索反射によって顔や頭の血行が促進され、酸素や栄養がいきわたり、筋肉の緊張も緩和されます。
実際のお客様にも、肌質の変化やむくみ、顔の動かしやすさなど実感してもらうことが多いです。
- 肌質の変化
- むくみ
- たるみ
- 筋肉を柔かくする
- 顔の左右差
軸索反射(じくさくはんしゃ)とは、神経が刺激されることで、周りの血管や組織に影響を与える仕組みです。
この反射は、神経から放出される物質によって血管が拡張し、局所的な血流が増えることで起こります。
コラーゲンの産生促進
鍼で細胞(線維芽細胞など)に小さな傷を与えることで、傷を修復するための反応が起こります。
その際、コラーゲンやエラスチンの産生やターンオーバーが促進され、肌のハリや弾力が向上します。
長期的に美容鍼をすることで肌質が良い方向に変化していきます。
- 肌質の変化
- 肌のハリや弾力の向上
- ターンオーバーの促進
線維芽細胞(せんいがさいぼう)とは、皮膚や筋肉などの組織を修復する役割を持つ細胞です。
傷ができたときに働き、コラーゲンやエラスチンといった材料を作り出して、皮膚や組織を修復します。
ストレス軽減
鍼をすると、セロトニンやエンドルフィンなどの物質が分泌され、ストレスによる肌荒れや吹き出物ができにくくなります。
脳内麻薬とも呼ばれるこの物質の作用は、リラックスやストレス軽減、痛みを和らげることです。
自律神経を整えることにもつながります。
美容鍼を継続することで、ニキビに悩まなくなったお客様も。
- 肌荒れ
- ニキビや吹き出物
- 血行促進
脳内麻薬(のうないまやく)とは、体内で自然に作られる物質で、脳に快感や幸福感を与えたり、痛みを和らげたりする働きを持つものです。
気分を良くしたり、ストレスを軽減する助けになります。
美容鍼が身体に与える5つの反応
美容鍼によって身体に起こる5つの反応を解説します。
自律神経の調節
美容鍼の施術中にリラックスして寝てしまうお客様も多いです。
鍼をすることによって副交感神経のはたらきが亢進し、自律神経の調節されることでさまざまな症状を和らげます。
特に、頭や顔への鍼の刺激は自律神経を整えやすい部分です。
自律神経系のバランスを整えることを通じて、血行促進や臓器の機能調整、睡眠の質の向上などに寄与します。
視床下部を介した自律神経の調節だけでなく、三叉神経が支配する領域は鍼の刺激によって変化がでやすい部分です(逆行性伝導による反応)。
三叉神経核や三叉神経節が自律神経の中枢と近いので、自律神経に影響を出しやすくなっています。
目の疲れのケア
「目がすっきりした」「目の開きが違う」という感想をよくいただきます。
目の疲れは、長時間のスマホの使用や目の酷使によって、目の周りの筋肉が緊張し、血流が滞ることが主な原因です。
美容鍼では、目の周囲にも鍼をすることで、血流を改善し、筋肉の緊張を緩和します。
また、目の神経である眼神経につながるツボ(攅竹や魚腰)にも刺激が伝わるため、目の疲れが緩和されます。
美容鍼では、眼窩上神経や滑車上神経という眼神経の枝である部分に鍼をすることも多いです。
・魚腰:眼窩上神経
・攅竹:滑車上神経
脳の疲労を緩和
脳の疲労とは、ストレスや情報の処理が過剰になることで脳が疲れてしまう状態です。
脳の血流の低下や酸素不足が脳のはたらきを低下させる一因です。
美容鍼では、頭のツボ(百会や神庭など)を刺激することで、脳への血流を促進され、脳の疲労を緩和させます。
【脳の疲労】
主な症状:集中力の低下や頭がぼんやりする感覚、イライラ、不眠。
主な原因:長時間の仕事や勉強、スマホやパソコンの使い過ぎ。
頭の痛みや重苦しさへのアプローチ
美容鍼していたらいつの間にか頭の重苦しさも楽になっていた、という方もいます。
頭痛の原因のひとつは、頭や首、肩まわりの血行不良です。
鍼による刺激は血流を促進し、酸素や栄養を届けるとともに、筋肉の緊張を緩めます。
また、前述したエンドルフィン(体内の鎮痛物質)が分泌され、頭の痛みをケアします。
肩や首のコリからくる緊張性頭痛だけでなく、三叉神経という神経を通して片頭痛にもアプローチすることも可能です。
片頭痛は、三叉神経の炎症が痛みの原因の1つです。
その三叉神経が支配する頭や顔に鍼をすることで、片頭痛の緩和が見込めます。
免疫力を維持するサポート
自律神経の調整、血行促進、免疫細胞の活性化、ホルモンバランスの調整などを通じて、体の免疫力を自然に引き上げます。
美容鍼のリスクとデメリット
美容鍼は基本的に安全ですが、適切に行われない場合や体質によって、いくつかのリスクやデメリットが生じることがあります。
内出血(アザができる)
内出血は、美容鍼で最もよく見られる一時的な副作用です。
鍼が皮膚の下にある毛細血管を傷つけることで起こります。
顔の皮膚は非常に薄く、血管が表面に近い位置にあるため、鍼を刺すときに毛細血管に触れてしまいます。
数日から2週間程度で自然に治まります。
完全に防ぐことは難しいため、施術前にリスクについて説明を受けておくことが大切です。
痛みや違和感
美容鍼による痛みや違和感は、一瞬で軽い場合がほとんどです。
鍼を皮膚に刺す瞬間、皮膚の神経が刺激されることでチクッとした軽い痛みを感じることや、鍼が筋膜やに触れることで、ズーンとした重だるい感覚が起こることもあります。
使用する鍼の種類や刺す深さ、角度などが適切でない場合、痛みを強く感じることがあります。
熟練した施術者であれば、このリスクを最小限に抑えることが可能です。
ストレスや疲労、寝不足などで敏感になっていると、通常より痛みや違和感を感じやすくなります。
施術直後の赤み
鍼刺激による自然な反応であり、一時的な炎症反応です。
通常は数時間以内に治まります。
血流の増加や治癒反応が活性化している証拠です。
これにより肌のターンオーバーが促進され、ポジティブな要素と考えられます。
皮膚が薄い人や敏感肌の人、血行が良い人は、赤みや腫れが出やすい傾向があります。
施術後のだるさや疲労感
施術による体の自然な反応の1つです。
この症状は一時的なもので、体がリラックスしていることや血流の変化、自律神経の変化によるものが多いです。
体が本来の健康なバランスを取り戻すために一時的に起こるものなので、あまり心配しすぎる必要はありません。
体をゆっくり休めて水分補給を心がけることで、自然と解消します。
疲労が蓄積している人や寝不足、ストレスが多い人は、施術後に体の調整が強く行われるため、だるさを感じやすいことがあります。
個人差による変化のばらつき
美容鍼は、施術を受ける人の体質や生活習慣、肌の状態、鍼に対する反応の違いによって、個人差が大きく影響します。
一度の施術で大きな変化を感じる人もいれば、数回の施術を通じて徐々に実感する人もいます。
健康的な生活習慣を心がけ、悩みや目標に合わせた計画的な施術を行うことが大切です。
期待値とのギャップ
美容鍼の期待値とのギャップは、施術を受ける人の理想と実際の変化との間に生じます。
このギャップは、美容鍼への誤解や過度な期待、または施術による個人差によって起こります。
美容鍼は、個人差や継続性の必要性が伴うため、施術を受ける前に正しい期待値を設定することが重要です。
美容鍼の本質は、体の自然な力を引き出し、美しさと健康を整えるサポートにあります。
これを理解した上で施術者とコミュニケーションを取り、期待値とのギャップを最小限に抑えることができます。
美容鍼は正しく行われれば安全で効果的な施術ですが、リスクを完全に排除することはできません。
信頼できる施術者を選び、自分の体調や肌状態に合った施術を受けることが大切です。
注意すべき人
以下の方は、美容鍼を受ける前に施術者や医師と相談する必要があります。
- 妊娠中の方(特定のツボを避ける必要があります)
- 出血しやすい体質や抗凝固薬を服用している方
- 皮膚疾患やアレルギーがある方
美容鍼に向いている人・向いていない人
求める変化や向き合う姿勢によって、美容鍼が向いている人・向いていない人がいます。
向いている人 | 向いていない人 |
自然なアンチエイジングを求める人 | 即効性や劇的な変化を求める人 |
継続的にケアをしていく姿勢がある人 | 内出血や赤みといった軽いリスクを受け入れられない人 |
健康と美容の両方を重視する人 | 美容整形のような変化を期待している人 |
美容鍼のQ&A【13選】
Q1. 美容鍼は痛いですか?
鍼は非常に細いため、ほとんど痛みを感じない方が多いです。ただし、場所によっては一瞬チクッと感じることがあります。また、刺激を感じることで「効いている」と実感する方もいます。
Q2. 美容鍼はどのくらいの頻度で通うべきですか?
2~4週間に1回の施術をおすすめします。目的や肌の状態に合わせて調整が必要です。
Q3. 施術後、効果はどれくらい持続しますか?
個人差はありますが、1回の施術での変化は数日から1週間程度持続します。
Q4. 美容鍼を受けた後、すぐに化粧をしても大丈夫ですか?
大丈夫です。ただし、施術後は肌が敏感になっていることがあるため、優しくケアをすることをおすすめします。帰宅後はしっかり保湿を行い、紫外線対策も忘れずに。
Q5. 内出血が起きることはありますか?
はい、内出血が起きることがあります。鍼が毛細血管に当たることで起こりますが、1~2週間で自然に消えることが多いです。
Q6. 美容鍼はどのような肌の悩みに向いていますか?
美容鍼は以下の悩みに期待できます。
- シワやたるみ
- むくみ
- くすみ
- 肌荒れ(ニキビ、乾燥肌など)
- 顔のゆがみや左右差
Q7. 美容鍼には副作用がありますか?
美容鍼は副作用が少ない施術ですが、以下のようなことが起こる場合があります。
- 内出血
- 痛みや違和感
- 施術後の赤みや軽い腫れ
- 一時的なだるさや疲労感
これらは一時的なもので、数日~2週間以内に解消します。
Q8. 美容鍼は誰でも受けられますか?
基本的にはほとんどの方が受けられますが、以下の場合は事前に相談してください。
- 体調不良や発熱がある場合
- 妊娠中の方
- 血液疾患や抗凝固薬を服用している方
- 皮膚疾患やアレルギーがある場合
Q9. 美容鍼は男性でも受けられますか?
はい、男性にもおすすめです。特に、顔のむくみやたるみ、肌質ケアを求める方に適しています。最近は美容意識の高い男性からの人気も増えています。
Q10. 施術後の注意点はありますか?
施術後は以下の点に注意してください。
- 激しい運動や長時間の入浴は避ける(血流がさらに促進され、内出血を引き起こす可能性があります)
- 十分な保湿と紫外線対策を行う
- アルコール摂取を控える
Q11. 美容鍼とエステの違いは何ですか?
美容鍼は、肌の表面だけでなく、筋肉や血流、神経にアプローチする施術です。一方、エステは主に肌表面をケアする施術です。美容鍼は、内側からの変化を目指す点で異なります。
Q12. 美容鍼はどんな服装で行くべきですか?
基本的に顔に施術を行うため、特に服装の制限はありませんが、リラックスできるゆったりとした服装をおすすめします。また、肩や首の施術が入る場合もあるため、襟元が開いた服が便利です。
Q13. 美容鍼を受ける前に避けるべきことはありますか?
施術前の食事や飲酒は控えるのが理想的です。また、体調が悪い場合は無理をせず、予約を変更することをおすすめします。
終わりに
美容鍼は、外見の美しさだけでなく、身体を整えるための自然なアプローチです。
肌のトラブルや年齢による変化にお悩みの方、忙しい日々で疲れを感じている方にこそ、一度その魅力を体感していただきたい施術です。
ただし、美容鍼の効果や感じ方には個人差があります。
施術を受ける際は、信頼できる施術者としっかり相談し、自分の体調やお悩みに合ったケアを選んでください。
定期的なケアを続けることで、肌や身体の変化を感じられる日がきっと訪れるはずです。
美容鍼を通じて、内側から輝く美しさを目指してみませんか?
この記事が美容鍼を知るきっかけとなり、皆さまの健康と美しさに役立てば嬉しい限りです!