スマホ失明とは?
スマホが私たちの日常生活に欠かせないものになった一方で、健康への影響について考えたことはありますか?
眼科医の川本晃司氏が執筆した「スマホ失明」は、このスマホの多用によって急速に進行する近視のリスクと、それが最悪の場合、失明につながる可能性について警鐘を鳴らしています。
スマホ失明 [ 川本 晃司 ]*本記事でいう「失明」とは、完全に見えなくなる失明だけでなく、日常生活に支障をきたすほどの視力低下がある不完全な失明も含みます🙏
・完全な失明:光を全く感じることができない状態。
・不完全な失明:ある程度の視力は残っているが、日常生活に支障をきたす程度の視力低下がある状態。
スマホと近視の関係
私たちがスマホを使う時間は年々増加していますが、その結果として子どもや若者を中心に近視の進行が著しくなっています💦
オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所によると、2010年に約20億人だった世界の近視人口は、2050年には約50億人に達する見込みです。
このうち約10億人が「強度近視」と呼ばれる深刻な状態に陥り、失明リスクに直面すると予測されています。
【強度近視の特徴と原因】
・原因: 遺伝的な要因、近視の進行、生活習慣などが複雑に絡み合って発生すると考えられています。
・強い近視: 通常の近視よりも度数が強く、眼鏡やコンタクトレンズの度数が-6.00Dを超える場合が多いです。
・眼軸長の伸長: 眼球の前後方向の長さである眼軸が、通常よりも長くなってしまいます。
特に日本では、文部科学省が2021年に行った調査で眼視力が1.0未満の小学生は36.87%、中学生は60.28%に上ることが明らかになりました。
この統計からも、子供たちがいかに近視に悩まされているかがわかります。
近視の進行と「失明カスケード」
近視は単に視力が悪くなるだけでなく、進行すると網膜剥離や緑内障といった失明を引き起こす病気のリスクを高める要因にもなります。
網膜剥離:カメラのフィルムにあたる部分である網膜が、眼底から剥がれてしまう病気です。網膜が剥がれると、視力低下や視野欠損などの症状が現れ、放置すると失明に至る可能性もあります。
緑内障:眼圧が高くなることによって視神経が障害され、視野が狭くなる病気です。進行すると、失明してしまう可能性もあります。
この書籍では、失明に至るまでの3つの段階を「失明カスケード」として以下のように説明しています⇩
1.近視の進行
近視が進行すると、眼球が前後に伸びて眼球が楕円形になるため、目にかかる負担が増します。
これは、網膜やその他の組織に圧力をかけ、損傷を引き起こす可能性があります。
若い世代で近視が進行するスピードが速く、成人期までに深刻な視力低下が生じるケースも多いです。
2.眼疾患の発生
近視が高度になると、網膜剥離や緑内障、黄斑変性などの重度の眼疾患が発生するリスクが著しく高まります。
これらの疾患は視力を大きく低下させ、最終的には失明につながる可能性があります。
3.失明のリスク増加
近視カスケードが進行し、眼疾患が悪化すると、視力回復が難しくなり、最終的には完全な視力喪失、すなわち失明に至る可能性があります。
この段階では、医療技術をもってしても視力を取り戻すことが非常に困難です。
このカスケードは、一度始まると止めることが難しく、早期の予防と対策が非常に重要です!
特に、若い世代はスマホを長時間近い距離で見ることで、目の負担が増加し、急速に近視が進行する可能性があります。
近視を抑制するためのエビデンスベースの対策
では、どのようにしてこの失明のリスクを回避することができるのでしょうか?
著者は、エビデンスに基づいた近視進行の抑制方法をいくつか紹介しています。
1.スクリーンタイムを管理する
画面を見る時間を制限することが、最も効果的な近視進行の抑制方法の一つです。
特に、連続して長時間スマホを使用するのではなく、定期的に休憩を入れることが推奨されています。
20分に1回、20秒間、20フィート(約6メートル)以上離れたものを見る「20-20-20ルール」も有効です。
2.アウトドア活動を増やす
研究によると、屋外での活動時間を増やすことで、近視の進行を遅らせることができることがわかっています。
日光に当たる時間が増えることで、目の発達が健康的に保たれ、近視のリスクが軽減されるとされています。
3.視距離の適正化
スマホを使う際は、できるだけ目から画面を離し、正しい姿勢で使用することが重要です。
目に近すぎる位置で画面を見続けると、目の負担が大きくなり、近視が進行しやすくなります。
4.適切な環境を整える
画面の明るさや部屋の照明を調整し、目に負担をかけないようにすることも効果的です。
また、スマホのブルーライトをカットするフィルターやアプリを活用することも推奨されています。
行動経済学と近視対策
この書籍の特徴は、単なる健康対策にとどまらず、行動経済学の視点からもアプローチを提案していることです!
著者は、医療現場における「認知心理学」と「行動経済学」を応用し、視力低下の防止に役立つ行動を促す方法についても解説しています。
例えば、私たちは無意識にスマホを手に取って使用し続ける傾向がありますが、これを抑制するためにスマホの使用を自己管理できるアプリやツールを活用することが効果的です。
また、家族や友人と目の健康について話し合うことで、互いにスマホの使用を制限し合うことも推奨されています。
行動経済学は、経済学と心理学を融合させた学問であり、人間の非合理的な行動や意思決定のメカニズムを探求します。
この分野は、従来の経済学が前提としていた「人は常に合理的に行動する」という考え方に対する批判から生まれました。
行動経済学は、実際の人間の行動を観察し、それに基づいて理論を構築することを目指しています。
未来に向けた提言
書籍「スマホ失明」は、失明リスクの回避に向けた具体的な行動を提案しつつ、スマホやデジタルデバイスとの”最適な共存”を目指しています。
スマホは日常生活に欠かせないものですが、それと同時に目の健康を守るために意識的な選択をしていくことが重要です。
著者は、読者に対して「やらなかった後悔は、永遠に残り続ける」というメッセージを送り、今すぐにでも近視対策を始めることの重要性を訴えています。
終わりに
書籍「スマホ失明」は、スマホの使用と近視の進行、さらには失明リスクとの関連性について科学的に解説しつつ、実践可能な対策を示しています。
特に、エビデンスに基づいた方法や行動経済学を取り入れた提案は、現代社会における視力保護のための貴重なガイドラインとなるでしょう!
スマホが手放せない現代人にとって、目の健康を守るための必読書と言えると思います。
ご興味ある方は、ぜひ一読することをおすすめします!
スマホ失明 [ 川本 晃司 ]