新たに発見された「咬筋」
長い間、咬筋は2層だと考えられていましたが、2021年スイス・バーゼル大学の研究により今まで発見されなかった3層目である「コロノイド咬筋」と呼ばれる部位が見つかりました。
すえ先生
本記事ではコロノイド咬筋と従来の咬筋について解説していきます!
コロノイド咬筋について
特徴
コロノイド咬筋は、咬筋の中では最も奥深くにあり、約1cmと非常に小さい筋肉です。
しかし、以下のような他の咬筋にはない機能があり、重要視されています。
従来の咬筋とは違う機能
コロノイド咬筋には、今までの咬筋とは違う機能もあることがすでに分かっています。
- 下顎を後方に動かす。
- 口を閉じたときの顎の安定性をさらに高める機能があります。
この発見をきっかけに、これまで改善が難しかった症状に対する解決の糸口が見つかるかもしれませんね。
すえ先生
ちなみに、「コロノイド咬筋が下顎を後方に動かす唯一の筋肉」と書かれている記事もありますが、それは誤りです。
「側頭筋の後部繊維」も下顎を後方に動かす作用があります!
こめかみには下顎を引き上げ(閉口)や顎を後方に引く時に働く扇形の「側頭筋」があります(図1)。
日本歯科医師会
従来の咬筋
従来の咬筋についても簡単に解説します。
すえ先生
そもそも「咬筋」とは、噛むときに使うアゴの筋肉ですが、今までは下の画像のように浅い層と深い層の2層だと思われていました。
浅い層の咬筋
筋肉の起始・停止
浅い層の咬筋は、頬骨弓の前2/3部分から始まり、後下方へ向かって下顎枝の外面に広く停止します。
位置と方向
- 頬骨側頭縫合より前方に位置し、後下方に向けて走行しています。
- 表層は比較的浅い位置にあり、体表からも触れやすいです。
主な役割
- 主に下顎を上方に引き上げる働きをします。
- 大臼歯部での咬合時に最も効率的に機能します。
深い層の咬筋
筋肉の起始・停止
深い層の咬筋は、頬骨弓の後2/3部分から始まり、垂直に下行して表層の停止部の上方に停止します。
位置と方向
- 深い位置にあり、垂直方向に走行しています。
- 表層よりも顎に近い位置で機能し、顎を前上方に引き上げる役割を担います。
主な役割
- 下顎の挙上に加え、より細かな顎の動きをコントロールします。
- 顎の安定性を高める働きがあります。
まとめ
新たに発見されたコロノイド咬筋と従来の咬筋について説明しました。
浅層が主に力強い咬合を担当し、深層や第3層がより繊細な動きや安定性を提供していると言えます。
それぞれの層が少しずつ異なる役割を担うことで、咀嚼や顎の動きを精密にコントロールしており、とても上手く機能していますね。
今後の情報を逐一チェックしていきます!