【現役鍼灸師が解説!】鍼灸の科学的な反応とそのメカニズムについて

健康

中国生まれの鍼灸ですが、現在は科学的な研究によって効果を検証されています。

ちょっと難しそうだけど気になる、鍼灸の科学的なメカニズムのご紹介です。

すえ先生
すえ先生

はりきゅう整体院すえの手の院長をしている私が解説します!

鍼灸治療とは

鍼灸しんきゅうは、針を用いて特定のポイント(ツボや筋肉、皮ふなど)に刺激を与える「鍼」と、温熱刺激を与える「灸」の2つの手法から成り立っています。

刺激を与えることによって起こる身体の反応を利用し、身体の自然治癒力を引き出して痛みや不調を和らげることが目的です。

すえ先生
すえ先生

中国生まれの鍼灸ですが、近年では西洋医学との併用が増えており、その科学的な効果についても多くの研究が行われています。

鍼灸の科学的なメカニズム

鍼灸は、主に以下のメカニズムによって説明されます。

  • 局所の血流促進
  • 神経系への刺激
  • 自律神経の調整
  • 免疫機能の活性化
  • 内分泌系への作用

局所の血流促進

鍼や灸で刺激をした部分に、CGRPやサブスタンスPという血管拡張や血管の透過性を亢進させる物質が放出されます。
これらの物質が血管を拡張させ、鍼やお灸をした局所の血流を促進します。

血流促進により、筋肉の緊張緩和や細胞への酸素の供給が増加し、痛みや不調が軽減されます。

血流の促進は、特に肩こりや筋肉の張りなど、慢性的な血行不良が原因で起こる症状に対して効果が期待できます。

  • 血管の拡張と透過性の亢進
    鍼が皮膚や筋肉の層に入ることで、局所的に血管の拡張や透過性が亢進し、酸素と栄養が豊富な血液が流れ込みます。
  • 細胞の修復促進
    血液中の酸素や栄養素が増加すると、周囲の細胞や組織の修復が進みやすくなり、痛みや炎症が和らぎます。

神経系への刺激

鍼灸をすることで、皮膚や筋膜にある感覚受容器が刺激されます。
この刺激は脳や脊髄に伝わり、内因性オピオイド(エンドルフィンやエンケファリンなど)という鎮痛物質の分泌を促します。
これにより、痛みが軽減されることが示されています。

鎮痛物質の分泌により、痛みの緩和に効果が期待できます。

  • 内因性鎮痛物質の分泌
    鍼の刺激によってエンドルフィンやエンケファリン、セロトニンなど、痛みを和らげる神経伝達物質が分泌されます。
    これにより、自然な鎮痛効果が得られるため、鎮痛薬に頼らずに痛みの緩和が期待できます。
  • ゲートコントロール理論
    鍼刺激によって一時的に痛みを遮断するという「ゲートコントロール理論」も鍼の鎮痛メカニズムの一つです。
    脊髄のゲートが閉じることで、痛みの信号が中枢神経系に到達しにくくなり、痛みを感じにくくなります。

自律神経の調整

セロトニンやエンドルフィンなどの神経伝達物質の分泌が促されることで、リラックスやストレス軽減に繋がり、副交感神経が高まります。

自律神経系のバランスを整えることを通じて、臓器の機能調整や血流促進、睡眠の質の向上に寄与します。

  • ストレスの軽減
    鍼を刺すことにより、副交感神経が優位になってリラックス効果が得られるため、ストレス性の不調や不眠、胃腸障害の改善が期待されます。
  • ホルモンバランスへの影響
    自律神経が整うことで、体内のホルモンバランスも安定しやすくなり、脱毛症や更年期障害、月経不順など、ホルモンに関連した症状にも効果が期待されています。

免疫機能の活性化

鍼は体内の異物として認識され、白血球が活性化されることで免疫機能が強化されます。
灸によりNK細胞の増加と活性化やサイトカインの増加が起こります。

また、血流が促進されることで細胞に十分な酸素と栄養が行き渡り、免疫機能が向上します。

免疫系の強化により、病気にかかりにくい身体作りがサポートされます。

  • 炎症反応の抑制
    免疫細胞が活性化すると、炎症が抑えられ、痛みや腫れが軽減されます。
    これにより、関節炎や慢性疼痛といった症状に対する緩和効果が見られることが期待されます。
  • 自己治癒力の向上
    免疫系の強化により、病気にかかりにくい身体作りがサポートされます。
    特に、風邪や感染症に対する抵抗力が高まるとされています。

内分泌系への作用

神経系を刺激することで脳内の神経伝達物質の分泌に影響を与えます。
これにより、ホルモン分泌を調整する中枢神経系に信号が送られ、ホルモンバランスが整えられると考えられています。

また、血流を促進するため、末梢組織への酸素や栄養素の供給を促進します。
これにより、ホルモン産生器官の機能が活性化され、ホルモン分泌が促される可能性があります。

ホルモンバランスを整えることで、様々な健康問題に役立つ可能性があります。

  • ストレス軽減によるホルモンバランス安定
    ストレスホルモンが減少することで、心身のストレスが緩和され、ホルモンバランスが安定しやすくなります。
  • 自律神経の調整によるホルモンバランスの安定
    前述した通り、鍼灸による自律神経の調整は、ホルモンバランスの安定に貢献すると考えられています。
  • 性ホルモンの調整
    更年期障害の症状改善や月経不順の調整をサポートする効果も期待されています。

鍼灸の科学的エビデンス

すえ先生
すえ先生

近年、数多くの研究が鍼灸の効果を科学的に検証しています。
以下にいくつかの分野について説明します。

  • 慢性痛
  • 頭痛
  • 不妊治療
  • ストレスと睡眠障害

慢性痛

鍼灸は慢性痛の緩和に有効であることが多くの研究で確認されています。

例えば、2012年に発表されたメタアナリシスでは、腰痛、膝の変形性関節症、頭痛に対する鍼灸の有効性が支持されています。

頭痛

頭痛の患者さんに対する鍼治療が薬物療法に匹敵する効果を持つことが示されています。

また、副作用が少ない点も特筆されます。

不妊治療

鍼灸は、不妊治療の補助療法としても注目されています。
特に体外受精(IVF)の成功率を向上させる可能性があるという研究結果があります。

ただし、効果の大きさや条件についてはさらなる検証が必要です。

ストレスと睡眠障害

鍼治療がストレス軽減や睡眠の質向上に寄与する可能性が複数の研究で示されています。

これには、自律神経の調整やストレスホルモンの減少が関与していると考えられます。

鍼灸の実際

当院に来院される実際の患者さんの一例です。

鍼灸の安全性と注意点

すえ先生
すえ先生

適切な技術を持つ施術者による治療であれば、重篤な副作用は非常に稀です。

ただし、以下の点には注意が必要です。

  • 感染症リスク
    滅菌されていない鍼を使用すると感染症のリスクがあります。
    日本では使い捨ての鍼が一般的に使用されています。
  • 内出血や痛み
    鍼を刺した部分に内出血や軽度の痛みが生じることがありますが、通常は数日で改善します。
  • 禁忌事項
    一部の疾患や妊娠中の場合、特定の経穴への施術は避けるべきとされています。

鍼灸と現代医療のそれぞれの強み

すえ先生
すえ先生

鍼灸と現代医療の統合は、医療の未来を大きく変える可能性を秘めています。

両者の強みを活かし、患者さんにとってより良い医療を提供するため、今後さらに期待されています。

鍼灸の強み

  • 慢性疼痛や神経疾患、消化器疾患など、西洋医学では治療が難しいとされる症状に対して効果を示すことが多い。
  • 自然治癒力を高めて体のバランスを整えることで、根本的な改善を目指す。
  • 薬物療法に比べて副作用が少ない。

現代医療の強み

  • 病気の診断や外科手術、薬物療法など、急性疾患や重篤な疾患に対して迅速かつ効果的な治療を行う。
  • 科学的根拠に基づいた治療法が確立されている。

鍼灸のような伝統医学と現代医学を組み合わせることで、患者の状態に合わせて最適な治療法を選択することを目指すことを「統合医療」といいます。

まとめ

鍼灸は科学的にも一定の効果が認められており、多くの症状に対する補助的な治療法として有用です。

ただし、効果には個人差があるため、適切な治療計画を立てることがとても重要。

また、信頼できる施術者を選ぶことが、安全で効果的な施術を受けるための鍵となります。

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