2024年9月11日に国内美顔器シェアNO.1のヤーマン株式会社が、新技術「CERTEC(サーテック)」の論文発表会を行いました。
本記事では、今回発表された「CERTEC」とその関連事項について解説していきます。
CERTECとは?
「CERTEC」とは、”Cell Energy Regeneration Technology”の略称です。
ヤーマンは、10 kH~200 kHz未満の範囲の電気刺激が異なる体験を提供することを発見し、この電気刺激技術が、たるみ肌を改善できるアプローチということで「CERTEC」と名付けました。
出力周波数と電極間距離を制御することにより、40~190 kHzで動作する熱による刺激と電気による刺激を両立したヤーマン独自の技術です。
すごい技術ですね!
CERTECの研究では、「高周波顔面神経筋電気刺激 (fNMES)」という、顔面の筋肉や神経に対して電気刺激を与える方法が使われています。
この高周波fNMESを、独自の出力周波数と電極間距離(40~190 kHz)で制御しているのがCERTECです。
この研究は、40~190 kHzで動作するCERTEC(細胞エネルギー再生技術)を搭載した装置を使用して、高周波顔面神経筋電気刺激(fNMES)が顔面の老化に及ぼす影響に関する知識のギャップを埋めることを目的としています。
Neuromuscular electrical stimulation for facial wrinkles and sagging: The 8-week prospective, split-face, controlled trial in Asians
高周波fNMESとは?
「fNMES」は、”Facial Neuromuscular Electrical Stimulation”の略で、顔の筋肉を電気刺激によって動かすことで、肌の状態を改善することを目指す方法です。
NMES(神経筋電気刺激)は、もともとお腹や太ももの筋力回復のために使われていましたが、最近では顔面筋の動きを促す顔面神経筋電気刺激(fNMES)としても利用されています。
これにより、顔面神経麻痺やうつ病の治療が行われます。
また、筋肉の厚さを増やすため、加齢による筋肉減少を防ぐアンチエイジング効果も期待され、最近の研究では、皮膚の弾力性やたるみ、二重あごの改善が見られました。
CERTECの研究で行われた高周波fNMESでは、従来のfNMESよりも高い周波数の電気を用いることで、より深く肌にアプローチした効果が期待されています。
NMES の電気刺激周波数帯には、3~300 Hz 未満の極低周波 (ELF) および超低周波 (SLF) 周波数帯と、キロヘルツ周波数帯があります。
Neuromuscular electrical stimulation for facial wrinkles and sagging: The 8-week prospective, split-face, controlled trial in Asians
ELFとSLF は主に体幹と四肢の筋力向上に使用されます。一方、キロヘルツ周波数帯は顔の老化に効果があると提案されています。
しかい、これまで行われた研究は 4 kHz の極低周波を使用したもののみであり、より高いキロヘルツ周波数での fNMES の研究はありません。
ヤーマン株式会社 (東京、日本) は、出力周波数と電極間の距離を制御することで、10 kHz から 200 kHz 未満の範囲の電気刺激は、極低周波とは異なる刺激体験を提供することを発見しました。(日本特許出願第2023-220654号)
この電気刺激技術は、たるみ肌を改善するアプローチからCERTEC(Cell Energy Regeneration Technology)と命名されました(国際出願番号PCT/JP2024/000870)。
NMES(神経筋電気刺激)の研究論文の一例
骨格筋への電気刺激法(神経筋電気刺激法:NMES)の筋力増強効果
CERTECにより期待される効果
CERTECでは、以下の3つの作用から従来の技術よりも優れた効果が期待されています。
- 温熱刺激:コラーゲンやヒアルロン酸の産生促進による肌のハリ・弾力の維持
- 電気刺激:表情筋の運動により顔のたるみのケア
- 血流促進:酸素や栄養素の運搬がスムーズに行い肌の栄養補給
温熱刺激
従来の技術である「RF(ラジオ波)」よりも表情筋に近い部分で熱と電気の刺激を肌に与えることにより、肌を内側から温めます。
その結果、線維芽細胞を活性化させ、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進し、肌にハリを与えます。
電気刺激
「EMS」と同様に、電気刺激によって筋肉に大きな運動を起こすことができます。
表情筋を動かすことによって、顔のたるみ(ほうれい線や頬・フェイスライン)の改善が期待されます。
血流促進
CERTECには、血流を大きく促進するという特徴があります。
RFやEMSにも血流促進の効果はありますが、CERTECはそれらの約1.5倍~2倍の高い効果をもたらし、継続使用することで長期的な血流改善が期待できる、という研究結果も発表されました。
血流改善により、老化した細胞から排出される有害物質の排除や、酸素や栄養素の運搬がスムーズに行えることにつながります。
高周波電流には、血管構造を安定化させるという従来の研究結果もあります。
CERTECの研究論文まとめ
今回紹介されていた研究論文を簡単にまとめると以下の通りです。
顔のしわやたるみに対する神経筋電気刺激
この研究は、高周波fNMES(顔面神経筋電気刺激)を顔に与えることで、シワやたるみといった肌の老化を改善できるか検証したものです。
顔の右側にはfNMESデバイスと基礎化粧品を、左側には基礎化粧品のみを8周間使用し、4週目と8週目に評価が実施されました。
評価方法は、測定機器を使用したシワ、たるみ、シミ、肌の水分量、肌の弾力性の測定、顔写真に基づく皮膚科医による主観評価、患者の自己評価、安全性評価が行われました。
主なポイント
作用メカニズム
- 筋肉の活性化:電気刺激によって顔の筋肉が刺激され、コラーゲンの生成が促進されます。
- 血行促進:血行が良くなることで、肌細胞への栄養供給が向上し、肌のターンオーバーが促進されます。
結論
高周波fNMESは、肌のハリや弾力、たるみを回復させ、若々しい肌を保つために有効な手段となる可能性が示唆されました。
しかし、個人の体質や肌の状態によって効果は異なります。
RFとEMSについて
CERTECに関連する既存の技術である、「RF」と「EMS」について出来るだけ簡単に、要点を絞って説明していきます。
RF(ラジオ波)について
RFとは、”Radio Frequency”の略称です。
美容や医療分野で使用される高周波の電磁波のことで、主に以下のような特徴と効果があります。
光(赤外線、可視光線、紫外線)やTVの電波は「電磁波」の一種ですが、ラジオ波もこの電磁波のひとつです。
仕組み
高周波(30~300MHz)の電磁波を皮膚に当てることで、体内の水分子を振動させ、熱を発生させます。
この熱が皮下組織まで届きます。
仕組み自体は電子レンジと似ています。
主な効果
- コラーゲン生成促進:熱刺激によりコラーゲンの生成が活性化されます
- 血行促進:体を内部から温めることで血行が良くなります。
特徴
- 非侵襲的:皮膚を傷つけずに深部まで作用します。
- 即効性:施術直後から効果を実感できることが多いです。
- 持続性:定期的な施術により、効果が持続します。
RFの研究論文の一例
Aging-skinに対するラジオ波治療後のコラーゲン・幹細胞の組織学的検討(2014)
EMSについて
EMSとは”Electrical Muscle Stimulation”の略称です。
電気的筋肉刺激のことで、もともとリハビリテーション目的で使用されていましたが、現在では美容目的でも広く活用されています。
身体の中で、筋肉は電気で動いています。
脳から出た電気が神経を通って筋肉に伝わることで筋肉が動きます。
この脳から出る電気の代わりに、機械からの電気で筋肉を動かすのがEMSの役割です。
仕組み
専用の機械を使い、皮膚の表面から電気刺激を与え、筋肉を収縮させます。
主な効果
- 筋力増強:筋肉に電気刺激を与えることで、筋肉を鍛えます。
- 筋委縮の予防:運動が困難な場合でも、筋肉を動かすことができます。
- 筋肉の回復促進:スポーツ後のケアなどに使用されます。
特徴
- 非侵襲的:皮膚を傷つけずに筋肉を刺激できます。
- 選択的刺激:特定の筋肉群を狙って刺激することが可能です。
- 運動との併用:通常の運動と組み合わせて効果を高めることができます。
EMSの研究論文の一例
骨格筋への電気刺激はどこまで運動の代替になるか?(2024年)
まとめ
CERTECは、顔のたるみや肌のハリ、弾力にアプローチする新しい美容法として注目されています。
しかし、いまだ研究段階であり、対象人数が少ないことや長期の追跡研究も課題として挙げられています。
今後の進展に期待していきたいと思います。